八徳狸が教えてくれる商売の極意「八相縁起」と狸ゆかりの名刹

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狸(たぬき)

先日、地元で有名なお蕎麦屋さんで、久しぶりに「美味しい~♪」とうなるお蕎麦をいただきました。

大満足で帰ろうとしたとき、ふと目に留まったのは、でっぷり太ったかわいらしい狸の置物。今までも何度か来たことがあるお店なのに、店先の狸に気づいたのは初めてでした。

そういえば、店先に狸を置いているお蕎麦屋さんが多いのは、なぜなんでしょう。気になったので、ちょっと調べてみました。

八相縁起とは

昔から「狸は化けて人をだます」と言われます。でも、同じように化けると言われている狐に比べて、狸はどこか間抜けで憎めませんよね。

ジブリ映画で「平成狸合戦ぽんぽこ」というユニークな作品がありました。体もお目々もまん丸の狸たちの奮闘ぶりが、とても可愛かったのを覚えています。

狸の置物

そんな可愛げのある狸の置物には、「八相縁起」という意味があるんですね。

  1. 笠=思わぬ災難を避ける為。用心は常に身を守る。
  2. 大きな目=四方八方に気を配り、正しく物事が見られるように。
  3. 笑顔=熱心に商売に取り組み、いつも笑顔で愛想よく。
  4. 徳利=人徳を身につけよう。
  5. 大福帳/通い帳=信用第一、世渡りに欠かせない帳面。信用を積もう。
  6. 大きなお腹=冷静さと大胆さを持ちあわせよう。
  7. 金袋=肝っ玉すえて精進しよう。
  8. 太い尻尾=終わり良ければすべて良し。

なるほど、商売繁盛に通じる8つの極意が込められているんですね。

さらにもうひとつ、「狸=たぬき=他を抜く。つまりライバルに勝つ。」という意味もあるのだとか。

どうりで、お店屋さんが店先に置きたがるわけです。

狸にまつわるお寺

全国には狸にまつわるお寺って、結構あるんですね。せっかくなので、ご紹介しておきますね。

證誠寺(しょうじょうじ)

木更津市の狸のモニュメント

まず始めにご紹介するのは童謡「証城寺の狸囃子」発祥の地、千葉県木更津市にある証城寺です。境内には童謡、証城寺の狸ばやしの詩を刻んだ碑も建てられています。

また、毎年十月末~11月初始めにかけて「狸まつり」が催されます。このお寺は慶長年間(1596年~1615年)に建てられた浄土宗のお寺で、境内は萩や山吹の名所としても有名です。

証城寺の狸伝説

ある仲秋の名月の夜のこと、証城寺の和尚様が寝ていると庭のほうから騒がしい物音が聞こえてきました。

「なんだろう」と不思議に思って、見てみるとなんと数十匹もの大狸、子狸が、自分のお腹をたたいて踊り狂っていたのです。

腹づつみを打ちながら踊り狂う狸たちの様子が、あまりにも面白いので和尚様は庭に出て、狸たちと一緒に踊り狂ってしまいました。

次の夜もその次の夜も、狸たちはあらわれ和尚様と楽しく踊ったのですが4日目の夜になると、急に狸たちの姿が見えなくなってしまったのです。

不思議に思った和尚様が辺りを探すと、踊りの時に音頭をとっていた大狸のお腹の皮が破れて死んでいました。かわいそうに思った和尚様は、境内にその狸のお墓・狸塚を建ててあげたそうです。

こんな悲しくて、ちょっと面白い言い伝えのある証城寺。木更津にお出かけの際は、ぜひともお立ち寄りくださいね。

茂林寺(もりんじ)

次にご紹介するお寺は、私が住んでいる群馬県にある茂林寺です。こちらの茂林寺にも狸の逸話があります。

そうです、ここはおなじみの昔話、「ブンブク茶釜」のお寺です。

茂林寺は、室町時代中期に開かれたお寺で、その後は後柏原天皇の勅願寺となったという名刹。

広い境内には江戸時代中期の本堂・庫裏(今でいう台所のようなところ)や室町時代中期の総門などがあります。

総門から山門までの参道の両脇には分福茶釜のお寺にちなんで、20体あまりのユーモラスな狸の像が並んでいます。

また、茂林寺には分福茶釜が寺の宝物として大切に保存されていて、その大きさは周囲が1.2メートル、重さが11.3キログラム、容積が21.8リットルもあるのです。

分福茶釜伝説その1

ある時、お寺で数千人もの人が集まる大法要が行われることになりました。

けれども、そんなに大勢の人を接待する茶釜がありませんので、お坊さんたちは大弱り。

すると、守鶴(しゅかく)というお坊さんが、どこからか1つの茶釜を持ってきたのです。

ところが、この茶釜、くんでもくんでも湯がつきることがありません。人々は大変不思議に思ったのですが、実はその茶釜は守鶴が変身していたのです。

自分の本当の姿を見破られた守鶴は、やがてお寺から逃げ出してしまいました。

分福茶釜伝説その2

茶釜伝説1のエピソードを元に作られたのが、皆さんもよくご存じの「ぶんぶく茶釜伝説」です。

茶釜に化けた子狸がもとの姿にもどれなくなり、貧しいクズ屋さんに拾われます。そして2人は仲良く暮らすのですが、そのうちに狸は日ごろの無理がたたって死んでしまいました。

狸の死を嘆き悲しんだクズ屋さんは、お寺の和尚さんに全てを話して狸を供養してもらい、茶釜は寺の宝として安置されることになったのだとか。

 その他のタヌキにまつわるお寺

西運寺

京都府京都市に位置しているお寺。

裏山の狸を手なずけた住職の逸話から、通称・狸寺とよばれているそうです。信楽焼の狸の置物もまっていますよ。

屋島寺

香川県高松市に位置している屋島寺の境内には、蓑山大明神がまつられています。

化け狸の太三郎狸をまつられていて、佐渡の団三郎狸、淡路の芝右衛門狸とともに日本三名狸なんだとか。

「平成狸合戦ぽんぽこ」のイメージキャラクターとしても知られています。

まとめ

私が見つけた狸ゆかりのお寺は以上ですが、探せばもっともっと狸にまつわるお寺や神社があるかも知れません。

旅慣れてくると、旅になにか意味をもたせたくなるのも人情。たとえば、昨今はやりの「ご朱印めぐりの旅」なんかはその代表といえます。

歌にちなんだ旅、七福神にちなんだ旅、鉄道にちなんだ旅、そんなありがちの旅に飽きてしまった方は、今度はぜひ「狸にちなんだ旅」に出かけてみてはいかがでしょうか。

そして、お蕎麦屋さんの店先で狸の置物をみつけたら、「八相縁起」のことも思い出してください。