神無月
子供の頃から、疑問に思ったり気になったりしたことは、解決するまでずっと忘れられない性格でした。
そんな私には、毎年10月になるたびに脳内にクローズアップされる疑問があったのです。もう何年もずっと気になっていたので、そろそろ解決してスッキリしたくて調べてみました。
疑問の正体
私が長年ずっと気になっていたこととは…。
神無月と呼ばれる10月、全国各地の神社の神様たちの所在はどうなっているんだろうということです。
そもそも、こんな疑問を抱くようになったのはいつからだったのか?
あ、そうだ!
10月のことを「神無月」と呼ぶのは、日本全国津々浦々の神様が出雲に一同に介して、「神様の会議」を開くことに由来していると知ったときからでした。
全国の神様が出雲に出かけて地元は留守になる、だから神無月と呼び、逆に出雲では10月を「神在月」と呼ぶということがひっかかっていたのです。
「じゃ、10月の間は、出雲以外の人々は神様に守ってもらえないの?
たとえば神社にお参りに行っても、10月は神様のいない拝殿に手を合わせているわけなの?」
とまぁ、子どものように疑問を抱いたまま忘れられなくなってしまったのです。
神様たちの会議
旧暦の10月、日本中の八百万(やおよろず)の神々は出雲に集結して、何をするのでしょうか。
10月1日(または9月30日)に各地を旅立った神様たちは、10月10日ころ出雲大社に向かいます。
縁結びの神として有名な出雲大社。祀られている神様は大国主命(おおくにぬしのみこと)です。
大国主命というのは、国造りの神様であると同時に、農業、漁業、商業、医療と人々の生活に関わるあらゆる分野に携わる神様です。
縁結び専門ではなく、まさしく国の万事万物を司っています。また、縁結びについても、単に男女の仲だけに限らず、さまざまな縁を結ぶ「福の神」としても信仰されているのです。
そんな大国主命のもとで、日本中の神様は人々の縁について話し合ったり、生死や寿命、天候、お米の出来具合なども議論すると考えられていました。
地元は手薄でいいの?
10月の1ヶ月間は、出雲以外の場所では神様が不在となります。それじゃ、地元の人々の暮らしは誰が守ってくれるのでしょうか?
私の疑問も、まさにこの点でした。
でも、心配無用だったのです。
実は皆さんにもおなじみの神様が、出雲へお出かけ中のほかの神様に代わって留守番をしてくれているのです。
留守役は、えびす様。誰もが知っている、おなじみの神様ですね。
えびす様は、釣り竿を持って鯛を抱えている姿からもわかるとおり、大漁の神様として信仰されてきました。また、正月の福男で有名な西宮神社に祀られているのもえびす様で、古くから商売繁盛の神様でもあったのです。
そんな、えびす様がしっかり守ってくれているから、たとえ神無月でも人々の暮らしは安泰。
神様とは本来おおらかなもの
神無月の留守居役の神様については、前述のえびす様以外にも、例えば東日本では大黒様、西日本では金毘羅様、と地域によって諸説あるようです。
大黒様といえば、大国主命と同一神という言い伝えもあります。そうなると、本来は出雲にいるべき神様が、よその地域の留守役をしているというのも可笑しな話しです。
でも、そんな細かいことを気にしないおおらかさこそ、神様の神様たる所以といえるのかも知れませんね。
10月も残り少なくなってきましたが、何はともあれ、私が長年引っかかっていた「神無月の謎」は一応解けたのでスッキリしました。